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心の体力の話

essay

今年も元パートナーの誕生日がやってきた。

普段はほとんど思い出すことなく過ごせるほど回復しているが、誕生日ということで少し想いを馳せようと思う。

著作「共生」にて

10月2日、大阪に開催されたフェスタマイノリティにて、「共生 -異形と人と-」を出展させてもらった。

何人かの方が共生を手に取ってくれ、その際に「あぁこんなこと書いたなぁ」と色々思い出した。

その中で、どうしてもこの話は今したいと思えたことがあったので、今の自分にも当てはめながら書いてみようと思う。

「しんどいレベル」

しんどいレベル(以下SL)の疲労レベルは人によって違うと思う。

元パートナーと私の間でも、かなり大きな違いがあったことを覚えている。

ここでは、最大(なんの問題もなく元気な状態)を10、自死に走る状態を0として考える。

例えば私(自閉症スペクトラム/うつ病)の場合だが、

  • 8:「しんどい」と言い始める(ちょっとだるい程度)
  • 5:回復を優先し始める(仕事が手につかなくなる)
  • 3:起床時間に目覚めても身体が起こせなくなる(ただし目覚ましをかければ起きる)
  • 2:目覚ましをかけても起きれなくなる/何が楽しいのか分からなくなる
  • 1:1日を寝て過ごすようになる
  • 0:強烈な自殺衝動が現れ、布団に包まってやり過ごす

といった感じ。

ちなみに、普段の私は目覚まし一発で起床でき、人生で寝坊による遅刻は片手で数えられる程度しかないため、下の方がいかに異常な状態かが分かる。(というより、寝坊による遅刻をしたときは相当追い詰められていたため文字通りの危険信号だったりする)

RPGでよく見るHPバーで例えると、「しんどい」を自覚or人に言うと黄、深刻な鬱の症状が出ると赤になると思ってもらいたい。

そして、元パートナーの場合、

  • 3:「しんどい」と言い始める
  • 1:「死にたい」と言う
  • 0:自死

…と、相当HPが減らないと「しんどい」を発さないタイプの人だったのだ。

黄〜赤ゾーンが短いとヤバい

私の場合、黄が8、赤が2と考えると、ちょっとしんどいなと思ってから深刻な状態になるまでにかなりの猶予があると捉えられる。

また、5になった地点で、メンタルを立て直すべく回復行動を取り始めることが多いため、滅多なことでは赤にならない。

しかし、元パートナーの場合は黄が3、赤が1だったため、ギリギリになるまで彼の苦しみが把握できなかったのだ。

もしかするとずっとしんどいと思っていたのかもしれないが、ゲームのイライラ以外はほとんど表に出なかったためか余計に難しかったと思う。

黄ゾーンが短いタイプの場合、気付かぬうちに赤ゾーンまで消耗し、そのまま自死に至る…という可能性が高いのはお分かりいただけただろうか。

回復力も大事

黄〜赤の猶予の差だけでなく、回復力も「しんどいレベル」を語るに外せない。

先ほど私が回復行動を取ると書いたが、具体的には

  • スナック菓子を買い込む(特にじゃがりこなど硬めのもの)
  • 食べたいものを食べる(宅配が増える)
  • ひたすら動画を見る
  • やりたいと思った時にゲームをする
  • 字が読める状態なら読書する

など、身体が無意識に求めたことを叶えるようにしている。

この方法で死別のダメージを1年未満でほぼ回復しており、受けるストレスより回復量が大きく上回っているのが分かる。

しかし、元パートナーの回復行動は基本的に「夜寝るだけ」だった。

確かにイライラを鎮めるには理にかなっている方法だが、本当にしんどくなってからは寝るだけで回復が追いついていなかった。

その結果じわじわとSLが削られ、死に追いやられた…というところだと思う。

趣味であるゲームで毎日のようにイライラしていたため、回復どころかダメージ源になっていたのもあっただろう。

以上のことから、「しんどい」状態になりやすい人は、効率のいい回復手段をいくつか探しておくのが大事だと思う。

もちろんそれだけでは根本的な解決にはなっていないため、治療や環境の改善と並行するのはマストだが…

自己理解のために

フェスタマイノリティにて何人かと話したが、やはり自己理解が難しい人は多いとのこと。

もし今自己理解に悩んでいる人がいれば、ぜひあなたの「しんどいレベル」を作って貰えばと思う。

10〜0まで全て埋める必要はなく、大体どれぐらいでどんな症状・状態になるか。

そして、自分の黄〜赤ゾーンがどれぐらいあって、どんな行動をすれば回復できるのか。

これらの内容を考えるだけで、大幅な自己理解につながると私は思う。

苦しんで死を選ぶ人が少しでも減りますように。